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ORTHOPEDICS

関節疾患について

関節の病気は、足が痛い、足を引きずる、足を浮かせるなど様々な症状を引き起こして、動物のQOLを低下させます。
放っておくと、関節の軟骨がすり減ったり、慢性の炎症や筋肉減少を引き起こしてしまいます。
損傷を受けると元に戻ることはないため、早めの診断治療が必要となります。
少しでも変だなと感じたら当院にご相談ください。

肩関節不安定症・肩関節脱臼

肩関節不安定症・肩関節脱臼

肩関節不安定症・肩関節脱臼

肩関節の脱臼は犬で時々認められ、内側に外れる内方脱臼が一般的です。
脱臼を起こすと痛みや歩行の異常が起こり、軽度であれば脱臼を整復し固定したり、内服薬によって改善することもありますが、脱臼を繰り返してしまう場合や重度の脱臼では手術による治療が必要になります。

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原因

先天性と外傷性に分けられます。
先天性ではもともと内側の関節包や靭帯が緩んでいたり、関節の発育不全があることにより起こります。
外傷性は落下や事故などにより脱臼を起こすことが一般的ですが、トイプードルなどの犬種では少しの力で脱臼を起こす傾向があります。ほかに肩関節不安定症という完全に脱臼はせず、肩に不安定が生じ跛行を起こす疾患もあります。

症状

肩関節に痛みが起き、前足を完全にあげてしまったり、歩き方の異常が認められたりするのが一般的です。
特に外傷性の場合には症状が強いことが一般的です。

治療法

1.温存療法

骨折などがなく、関節が正常であり、急性の脱臼を起こした場合には適応となります。脱臼を整復したあと包帯で固定し、運動制限や消炎鎮痛剤の投与を行います。

2.外科療法

関節包や靭帯の損傷を伴う重度の脱臼や、脱臼が繰り返す場合また不安定により症状が強い場合は外科適応となります。 脱臼の方向や程度によって手術様式は異なります。人工靭帯を使って関節を安定化する方法と、 関節の固定術に分けられます。

離断性骨軟骨症(OCD)

離断性骨軟骨症とは、成長期の大型犬や超大型犬にみられる軟骨内骨化の異常で、関節の軟骨が壊死して亀裂が入ったり剥離を起こします。その軟骨により関節に痛みや動きの低下を起こし、歩く際の痛みとして現れます。一般的に、生後5〜10カ月ほどで発症します。

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原因

離断性骨軟骨症は、成長期に関節の軟骨の成長障害により、軟骨が厚くなり、そこに力が加わったときに、軟骨がはがれて浮き上がり、痛みの原因となります。成長期に多い関節疾患なので、遺伝性や栄養性などの要因が疑われています。しかし詳しい原因は分かっていません。

症状

離断性骨軟骨症は、肩関節で最もみられます。肘関節、膝関節などでも発症します。離断性骨軟骨症が起こった関節がある足をかばうようにひょこひょこと歩く、痛みがありきちんと地面に足を付けられないなどの症状が現れます。

治療法

1.内科的治療

2.外科的治療

関節切開または関節鏡下で遊離軟骨の摘出を行います。

肘関節形成不全(CED)

肘関節形成不全とは、肘関節の発育不全により肘に痛みが出る病気の総称です。肘の関節は上腕骨と橈骨、尺骨という3本の骨により形成されており、これらの1〜2本の骨の異常により発症します。成長期の子犬の多くに発症します。

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原因

一般的には発症原因は不明ですが、遺伝的素因の可能性が強く疑われており、その他栄養、外傷、肥満との関連も考えられています。

症状

初期の症状は成長期に見られる前肢の破行です。歩行中に頭が上下したり、運動や散歩を嫌がる症状が出ることもあります。

治療法

症状が軽い場合には鎮痛剤や軟骨保護剤の投与による内科治療を行います。
併せて運動制限や体重のコントロールを行います。
痛みが強く、内科治療でのコントロールが難しい場合は、状況に併せた術式を選択して外科手術を行います。

膝蓋骨脱臼

膝蓋骨脱臼とは、犬の後肢にある膝蓋骨(いわゆる膝のお皿)が正常な位置から内側、または外側に外れてしまう状態をいいます。小型の犬では、膝蓋骨の内側への脱臼(内方脱臼)が多くみられます。またメスの方が発症しやすく、発症率はオスの約1.5倍と言われています。

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原因

膝蓋骨脱臼が起こる原因としては、生まれつき膝関節の筋肉や靭帯に異常がある「先天性〜発育性」と、交通事故や高い所からの飛び降りのような膝に強い力が加わると起きる「外傷性」があります。

症状

膝蓋骨脱臼の症状は、その程度により次の4段階に分けられています。トイプードル、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャテリアなどの小型犬で多く見られますが、全犬種で認められる病気です。

  • グレード1 膝蓋骨は正常な位置にあり、無症状なことがほとんど。
    たまにスキップのような歩行をすることがあるが日常生活にあまり支障はない。
  • グレード2 膝蓋骨は通常正常な位置にあるのですが、膝の曲げ伸ばしで簡単に脱臼する。
    時々足を浮かせるような歩き方をするが日常生活に大きな支障はない。
  • グレード3 膝蓋骨は脱臼したままの状態だが、整復することが可能。
    腰をかがめ、内股で歩くようになる。
  • グレード4 膝蓋骨は常に脱臼した状態となり、指で押しても整復できない。骨が変形して、足を曲げてうずくまるような姿勢で歩いたり、歩けない状態になることも。

<術前>

  • 術前
  • 術前

<術後>

  • 術後
  • 術後
治療法

1.保存療法

症状がほとんどない場合や手術ができない場合には保存療法を行います。鎮痛剤やサプリメントの投与、運動の制限、生活環境の改善、体重管理などを行います。根本的な治療ではないため症状が悪化する可能性があります。

2.外科療法

滑車造溝術
脛骨粗面転移術
矯正骨切り・軟部組織再建術
※犬種や年齢、症状に応じて手術方法が異なるためご相談ください。

前十字靱帯断裂

前十字靭帯は、後十字靭帯とともに大腿骨と脛骨を結ぶ太い靱帯です。前十字靭帯断裂は、この前十字靱帯が切れてしまう病気です。片側の前十字靱帯犬の関節疾患の中でも代表的な疾患で、あらゆる年齢や犬種で発生する疾患です。

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  • 前十字靱帯断裂
  • 前十字靱帯断裂

原因

前十字靱帯は、加齢や関節炎により靭帯が弱くなったり、肥満のような大きな負担がかかることで切れやすくなります。小型犬で膝蓋骨脱臼がある場合は前十字靭帯断裂を起こしやすく、急なジャンプやダッシュ、落下や外傷などが加わることで併発していることも多く見られます。

症状

前十字靭帯靭帯断裂をおこした直後は、激しい痛みを伴います。痛みのために地面に足を少ししか着けないような歩き方をしたり、足を挙げたままの状態になったりします。体重が軽い犬の場合、痛みは2〜3日経つと軽減することが多いです。しかし重症度によっては 足の筋肉が落ちる前に手術する必要がある場合もあります。早いうちに一度来院いただき、ご相談ください。

治療法

1.保存療法

鎮痛剤投与
運動制限
体重管理 など

2.外科的治療

脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO)
関節外制動法(Lateral Suture Stabilization)

足根

脱臼・亜脱臼・不安定症

脱臼・亜脱臼・不安定症

脱臼・亜脱臼・不安定症

足根関節には多くの靭帯が存在します。
交通事故や落下などの外傷によって、その靭帯や軟骨が損傷し、脱臼・亜脱臼・不安定症になることがあります。

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原因

交通事故や高所からの落下などの外傷により、線維軟骨や靭帯が傷害され脱臼・亜脱臼を起こしたり、骨折を伴うことがあります。

症状

足を着きづらいような症状や関節の痛み、腫れが認められます。

治療法

関節固定術による治療を行います。

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニア

背骨同士の間に存在する椎間板に変性が生じることで、背骨の中にある脊髄を圧迫する病気です。脊髄が障害を受けることで、痛みや足の麻痺などさまざまな神経症状を引き起こします。ダックスフンド、ペキニーズ、ビーグルなどの犬種で多く発症するといわれています。

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原因

間板の中心にある髄核が周囲を取り囲んでいる線維輪の亀裂から出て脊髄を圧迫するハンセンI 型と、線維輪が盛り上がって脊髄を圧迫するハンセンII型に分けられます。
ハンセンI型では、突然急激な症状が起こる傾向にあります。先程まで元気で遊んでいたのに、急に麻痺が起こるということもよく見られます。ハンセンII型では、劇的な症状が突然起こるというよりは、症状は慢性的に経過していきます。軟骨異栄養犬種といわれる髄核が変性しやすい犬種で起こることもあれば、加齢や外傷、過度な運動により引き起こされることもあります。

症状

ヘルニアが発生する場所や脊髄の圧迫の程度により症状は変わってきます。
足や体の痛み、足の麻痺が主な症状として現れます。触られるのを嫌がるという程度のこともあれば、重症度によっては自力で排尿ができなくなったりすることもあります。
また合併症として進行性脊髄軟化症という病気があります。脊髄が壊死・融解する進行性の病気で、最終的には呼吸不全にいたり亡くなってしまう病気です。椎間板ヘルニアの5%前後に発生すると言われています。

治療法

1.保存療法

安静、ケージレスト
消炎鎮痛剤
ビタミン剤 など

2.外科療法

Hemilaminectomy
Corpectomy
Ventral slot

骨折

外部からの力がかかることで、体の骨が折れる損傷を指します。
骨折はその種類によって分類され、この分類を正確に行うことで、適切な治療方法を選択できるようになります。

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<術前>

  • 骨折
  • 骨折

<術後>

  • 骨折
  • 骨折

原因

骨が折れる主な原因は、ソファや椅子から飛び降りて失敗した着地や、抱っこ中の落下などです。特に着地する場所は滑りやすいフローリングなどの環境が多いです。その他には、自転車で走行中にカゴから転落したり、高所から落下したり、交通事故に巻き込まれるなど、比較的強い外力が加わることもあります。
成長期には、骨の端にある成長板と呼ばれる軟骨からなる「骨を成長させる場所」があります。この成長板は、骨よりも強度が低いため、外部の力によって比較的簡単に骨折が起こりやすい傾向があります。高齢になると、骨密度が低下して「骨粗鬆症」のような状態になり、転倒などのわずかな外部の力でも骨折が起こる可能性があります。また、骨自体の強度が低下する原因として、腫瘍が存在する場合もあります。そのため、高齢になってから骨折した場合は、注意が必要です。

症状

キャンと鳴いた後に足を痛がることが一般的です。骨折はしばしば激しい痛みを伴うため、飼い主が触ろうとすると反応して怒ったり、噛みついたりすることがあります。4ヶ月未満の非常に若い犬の場合、骨折してもすぐに足を使うことがありますので、足を使えるようになったからといって安心せず、必ず病院で診察を受けることが重要です。

治療法

1.保存療法

包帯による安定化
運動制限

2.外科療法

髄内ピン法
クロスピン法
プレート固定法
創外固定法